「もー私、一か月お休みなくてもいい!!最高のオフだったぁぁ!!」
普段はOLさんであろう女子の、明るく弾んだ声が、ダイビングセンターの器材の洗い場に響いた。
「マミったら、さっきまで、ああ明日からまた仕事かあ・・ヤダヤダ言ってたのにさあ~!」と、アハハハと笑いあう仲間の女子たち。
雨もパラつく天気とは裏腹に、ものすごいキャイキャイっぷりである。
◇
彼女たちのテンションMAXの理由は、イルカだった。
彼女たちは、ラッキーなことに海の中でイルカに遭遇し、しかもしばらくイルカが一緒に遊んでくれたらしい。
初島ではここ数日、なんとダイバーに積極的に絡んで遊んでくるというペアのイルカが出没しているらしい。
その噂は、ダイバーたちの間で密かに、そしてじわじわと広まっており、イルカ目当てで泊まり込みで初島に来ているショップもあった。
◇
私と相方は、そんな噂はつゆ知らず、初島へ出向いていた。
今回で私が100本ダイビング記念となり、ただ「近い・おもしろい・透明度がひどくならない」という理由で選んだ初島だった。
着いてみると、先月ここに来た時の、のんびりとしたダイバーたちの様子とは明らかに違っていた。
いつもであれば、メインのフタツネ辺りがダイバーで賑わうのに、 今日はイルカ出没のポイントであるニシマト方面へ、我先にと急いでいる。

もちろん、必ずしもイルカが見れるとは限らないらしい。
イルカは気まぐれで一度ダイバーと遊んだらしばらく来てくれないとか、すぐに逃げてしまうからカメラは必ず動画モードがいいとか、昨日はイルカはあの辺りでダイバーと30分近くも遊んだようだ、など色々な情報が錯綜していた。
私たちはイルカ目当てで来たのではないものの、この火事場の見物のようなイルカフィーバーに乗せられて、イルカポイントであるニシマト方面へ行ってみた。
すると、もう既に海辺から見える。
イルカが海面で放物線を描きながらジャンプしているじゃないの。
すごっ。こんなに近くに?
じゃあ、行ってみようか?
私たちは、慌ててエントリーを開始した。
◇
しかし海の中は、海藻しか見えなかった。
お魚もほとんどいない。
イルカが来なければ、この時期は特に何もないポイントなのだ。
ただ薄暗い海の中で、イルカを待つ。
エクジットしてみると、イルカたちは私たちが潜った後ろを横切ってしまったらしい。タイミングが悪かった・・・
◇
「ちゃんとバルブ開けたー?」
「忘れ物ないー?」
まだ初心者の学生のグループの引率で、イントラさんが大声であれこれ叫んでいる。なんだか大変そうだな・・
私たちとすれ違いで、学生グループが慣れない様子でバタバタと海に入っていった。
するとイルカがジャンプしながら向っている延長線と、学生ダイバーのグループが岸から向っている延長線が、その先交わっていることに気が付いた。
あれ?
これはもしや・・・?
その交点で、イルカは海面に現れることはなくなった。
今頃、海の中でイルカは学生たちと戯れているんだろうな・・・
いいなぁ・・・
なんか悔しい。
私たちはニシマトポイントを後にした。
【初島イルカフィーバー?】サプライズだらけの100本記念~その2 へ続く
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