photo by KENJI instagram
ある時から、私の中でカエルアンコウ愛が止まらない。
「カワイイ」を正統派で攻めるカクレクマノミなんかと正反対キャラでありながら、ダイバーの心をつかんで離さないカエルアンコウ。
圧倒的にブサ度が高い、 ブサカワイイの極みだ。
まるで退化してしまっているような、小さな目。
呆然と締まりがない、への字の口。
魚のくせに、ガッチリとした二の腕。
ほとんど動かない、海の不機嫌な果実。
その存在感は、他の追随を許さない。

そんな彼らに偶然出会えてしまったら、私は時を止めて、ただウットリ見入ってしまう。
あの日、あの時、あの場所で、白い君に出会った。
私のダイビングログには、そんな突然のラブストーリーがいくつか描かれていて、ふとした瞬間にそれを見返すと、心がふっと柔らかいものに包まれるようだ。
◇
ひとつ、引っかかることがあった。
どうやら記憶の断片には、私はカエルアンコウとよく似た人物にあったことがある、という情報があった。
それは間違いないのだけれど、それが誰かが思い出せない。
いったい誰なんだろう?
どうしても記憶の引き出しは開かないままに、今に至ってしまった。
◇
ちなみにPADIには、カエルアンコウ・オブザーバーなるスペシャルティがある。
その説明には、” カエルアンコウの知識、観察テクニック、危険性、楽しさに関する知識と経験、さらには慣れ親しんだ水域での楽しみの再発見ができます!”とある。
カエルアンコウの危険性ってなんなの?
知りたい (´д`)
宮崎あたりでこのSPは開催しているようだが、思わず東京からの経路を調べてしまった。
そもそもこんなSPなど(といったら失礼だが)、実生活の中で役に立つ可能性など、ないに等しい。
自己満足にしかならないけれど取得したい、と思ってしまう思考回路も、ヤバイ、暴走しているな、と自覚している。

先日、ホームセンターで買い物をしていた時のことだ。
レジで並んでいたところ、後ろからガタイのいいオバチャンが勢いよくぶち当たってきた。
一瞬タプタプのお肉が触れたと思ったら、ドンとくる衝撃がきた。
私は大型の箱を抱えていたので、よろっとバランスを崩し、そのオバチャンの方を振り返った。というか、睨んだ。
とっさのことで、私も顔に出ていたんだと思う。
そしたら、そのオバチャン、まるでピグモンみたいに口をへの字に曲げながら、「あら、ゴメンなさいね~」と、小さなトートバックを振り切れるくらいに振り回しながら、のしのしと立ち去った。
その言葉じりも風貌も、「ゴメンなさい感」は皆無だ。
ふと、思い出した。
あ・・・・あの人か!
私の中での、カエルアンコウによく似た人物の正体を、ついに思い出した。
◇
あれはもう数年前の話だ。
うちの母親が東京に遊びに来ていた時、その辺のスーパーで大量に買い物をしたことがあった。
母親は、なかなか一緒に買い物をする機会もないからと、娘のためにとあれもこれもと、買い物かご山盛り3つ分を持ってレジに並んでいた。
レジで私たちの番になり、延々とレジ打ちが始まった。
そのすぐ後ろに、一人のオバチャンがいた。
私たちのレジ打ちを、ピグモンみたいなスゲエ顔で睨みつけていた。
大量の買い物に呆れていたのか、自分の番を待たされている腹立だしさ、なのかわからないけれど、もうそれは画像修正が必要な位のマスクだった。
どうやら私の頭の中では、「ピグモンみたいなオバチャン」=「カエルアンコウに似ている」という図式らしい。
実際のカエルアンコウは、親指くらいの大きさだから「ブサカワイイ」で済んでいる。
が、あれをレジ付近のオバチャンサイズに引き延ばしたら、きっと誰もが震え上がるくらいにおぞましいはずだ。
◇
ああ、こんなこと、思い出さなければよかった。
可愛いはずのカエルアンコウは、レジ付近に現れるオバチャンという、変なシナプスが繋がってしまった。
きっとこの先も、それは払拭することができないだろう。
海の中でカエルアンコウに会うたびに、あのオバチャンを思い出したくない。
やはりこの事態を回避するためには、 カエルアンコウ・オブザーバー のSPに挑戦して、新たな知識で上書きするしかないか、と心が固まりつつある。
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